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   航空 宇宙 space             Air & Space / Voyages to the space 

     日本の宇宙開発  <JAXA相模原キャンパス見学記>

1. ペンシルロケットからイプシロンヘ

  
ロケット開発の第一歩を踏み出したのは、故糸川東大教授のペンシルロケットです が、最初の実験は1955年(昭和30年)でした。
  打ち上げる場所も定められた場所はなく、周囲の安全を考慮したためでしょう、射 撃訓練場で水平打ちされたそうです。

  ペンシルロケット実機

ペンシルロケット実機後ろ ペンシルロケット実機と糸川教授

 さて、ここは神奈川県相模原市にある JAXA相模原キャンパスです。入門して少し進むとメインビルが現れ、その右手には実物大の「ミュー3SU」「ミューV(ファイブ)」が誇らしげに並びます。
 JAXA相模原キャンパス ミューロケット達

 M-3SIIロケットは3段の固体燃料ロケットで、1985年日本で最初の惑星間探査機「さきがけ」と「すいせい」を宇宙に運んでおり、このとき世界初の固体燃料ロケットによる地球脱出という偉業も達成しています。その後、超新星からのX線をキャッチした
「ぎんが」、オーロラ観測の「あけぼの」、わが国で初めて月に向かった「ひてん」、太陽の姿をX線でとらえている「ようこう」、宇宙空間の星・銀河をX線観測して銀河誕生の謎に迫っている「あすか」などの衛星を運び、宇宙科学の分野に大きく貢献してきました。

      ミュー3S2

 平成8年度からは、科学衛星打ち上げ用ロケットとして新たに開発された大型のミューV型ロケットが用いられ、ミュー3SIIは1995年で運用を終了しています。
 下はミューVで、M-V(えむ-ご)と呼ばれています。これも大活躍しましたが一番分かりやすいのは「はやぶさ」を運んだことでしょう。

      ミューファイブ


ロケットの年表 
 下の開発の歴史年表の 中央やや上にある西暦表示ベルトの上側は 旧宇宙科学研究所
(ISAS)の開発歴史で、下は 旧宇宙開発事業団(NASDA)の歴史です。
 また科学技術庁 、文部省が統合され 文科省になり、それぞれの管掌下にあった両者も統合され 2003年に 独立行政法人
「宇宙航空研究開発機構 JAXA」 となった年から この年表の上下ともに濃い青色のJAXAになっています。

 ラムダ4S(5号機)は 1970年に日本初の衛星 「おおすみ」 を運んだロケットです。 ずいぶん細く 直径は 76.7cm です。
 
 
  ロケット開発年表1

                            
クリックで拡大します。

  黄色い矢印線は技術の流れを、薄緑色は運用期間をそれぞれ示しています。技術の 流れはペンシルロケットを出発点として、個体燃料系はもとより液体燃料系列にも繋  がっています。
  スケー ルはペンシルの現寸大を除き 1/100です。

  ロケット開発年表3
ロケット開発年表2 ロケット開発年表4

 ペンシル,ベビー,カッパ,ラムダ,ミュー,そしてミューVへと進み、最新のハイテク
ロケット
「イプシロン」へと歩みました。
 上の年表で大きなH2ロケットの右が、昨平成25年打ち上げられた「イプシロン」です。下はその模型ですが打ち上げ前の展示でしたので "将来計画" と書かれています。

      イブシロンロケット

 磨きあげられた個体燃料技術は、洗練され世界的にユニークなものとなりました。一方大型の実用衛星を打ち上げるために、ロケットエンジンも液体燃料とし高出力化・大型化をされ、年表下側に見られる「HUロケット」が登場することになります。これらは(旧)宇宙開発事業団で開発されましたが、上述の通り今では統合されています。
 HUロケットや大型の実用衛星は、JAXA-筑波の見学記で紹介致します。



 去る2005年はペンシルロケットの 50周年でしたのでそれを記念に、また若い学生たちに体験させる主旨でペンシルロケットの再現試射がありました。その公開されているビデオの一部を以下に静止画像で掲載させて頂きます。
           ( ボタン > をクリックし、スタートしてください。)
 


2. 日本の人工衛星

 おおすみ 
 初の人工衛星おおすみ おおすみ打ち上げ解説

 おおすみの成功に至るまでのストーリーはドラマです。敗戦国であるが故にミサイル技術に繋がる姿勢制御ができず、風まかせロケットと言われたり、国会での説明に糸川教授がかり出されたりでした。無誘導打ち上げといい、これも世界初で唯一と言うことで誇ってよいものです。ミサイル技術の副産物として衛星がついてくるのが他国の例ですが、我が国の開発は大変特異なものだったのです。

 打ち上げ前に気球を飛ばして風や気象を観測したそうですが、ある責任者は風向きなどを自分の肌で感じて、ロケットランチャーの(打ち上げ)角度を決めた…などと言う信じ難いお話しもあります。

 上の写真の球形部とその下は4段目のモーター(ロケット)ですが、3段目の切り離し後3段目に追突されてしまう失敗が続き苦労したようです。

 それでも追い迫る中国を抑えて、ソ連(当時)、米国、仏国に続き世界で4番目の衛星打ち上げ国になったのでした。これらの労苦はドラマ化すると "はやぶさ" にも勝る面白さになると思われます。
(但し時間が経ちすぎてしまいました)


ハレー彗星探査
 ソ連(当時)、欧州、米国、日本の国際共同プロジェクトで彗星探査が実施され、日本は「すいせい」を打ち上げました。これに先駆けて同1985年に「さきがけ」が先行しました。アジアで唯一こういう国際共同作業をできたことは誇らしいことです。以下は、両者の 1/5スケールモデルで左が「さきがけ」右「すいせい」です。
      さきがけとすいせい


はやぶさ
 
この小さいボディで 7年間 60億km を耐えました。地球重力を使ってのスイングバイ、イオンエンジンなどがキーだと思います。上記「おおすみ」での諦めない不屈の精神は、しっかり受け継がれていたようです。 
      はやぶさ

 帰還時の大気圏突入の映像は感動的でした。採取された物質の拡大モデルです。 
はやぶさ試料回収 はやぶさ試料モデル


 「はやぶさ 2」は 諸改良が加えられ、今年2014年中に HUA ロケットで打ち上げられる計画です。はやぶさ1と同様に小惑星からサンプルを採取しますが、今度は採取直前に衝突体を打ち込み数メーターのクレーターを作り深部の試料を採取する計画です。
           はやぶさ2計画
       2020年帰還予定です。オリンピックに間に合うよう祈ります。

 右のイプシロンで打ち上げられた、惑星分光観測衛星「ひさき」(SPRINT-A)の1/5スケールモデルです。2013年9月に打ち上げられ、11月には初観測が行われ、機器は正常に作動していることが確認されています。 
      イブシロンと惑星探査衛星


 次世代の赤外線天文衛星「SPICA」です。全長 6.3m 総重量3.7t 有効口径3mの堂々たる望遠鏡で、2022年打ち上げ予定です。 
スピカ宇宙望遠鏡計画2 スピカ宇宙望遠鏡計画1






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バナースペース

西暦 出来事
1955 東大生産技術研究所、国分寺にてペンシルロケット水平試射
1955 秋田県道川海岸にロケット実験場開設、ペンシルロケット、ベビーロケット等打上げ
1958 2段式、カッパ(K)ロケット、高度60kmに到達
1961 カッパK-9L-2 高度300km以上の電子密度、温度の観測
1964 ラムダ(L)-3-1打上げ、高度1,000kmに到達
1970 L-4S-5、我が国初の人工衛星「おおすみ」打上げ(ソ、米、仏についで4番目)
1970 ミュー(M)-4 S -1打上げ
1971 M-4S-2、「たんせい」打上げ
1971 M-4S-3、第1号科学衛星「しんせい」打上げ。太陽電波、宇宙線などの観測
1972 M-4S-4、「でんぱ」打上げ。電磁波励起実権他行なう
1974 M-3C-1、「たんせい2号」打上げ。M-3Cは日本初の姿勢制御、電波誘導方式のロケット
1975 M-3C-2、超高層大気観測衛星「たいよう」打上げ
1977 M-3H-1、「たんせい3号」打上げ
1977 能代ロケット実験場において液水/液酸ロケット地上燃焼実験を開始
1979 M-3C-4、X線天文衛星「はくちょう」打上げ
1979 「ひのとり」打上げ
1980 M-3S-1、「たんせい4号」打上げ
1981 M-3S-2、「ひのとり」打上げ
1982 国際中層大気観測計画(MAP)参加で「おおぞら」
(M-3S-4、1984.2)打上げ
1983 M-3S-3、X線天文衛星「てんま」打上げ
1985 M-3SII-1、我が国初の惑星間試験探査機「さきがけ」打上げ
1985 M-3SII-2、ハレー彗星探査機「すいせい」打上げ
1987 M-3SII-3、X線天文衛星「ぎんが」打上げ
1989 M-3SII-4、オーロラ観測衛星「あけぼの」打上げ
1990 M-3SII-5、工学実験衛星「ひてん」打上げ。スウィングバイ 技術の確立
1991 M-3SII-6、太陽観測衛星「ようこう」打上げ
1992 磁気圏尾部観測衛星
「GEOTAIL」打上げ
1993 M-3SII-7、X線天文衛星「あすか」打上げ
1995 M-3SII-8、「EXPRESS」打上げ
1997 M-V-1、工学実験・電波天文衛星「はるか」打上げ
1998 2段式観測ロケットSS-520-1打上げ
1998 M-V-3、火星探査機
「のぞみ」
打上げ
2003 M-V-5、工学実験・小惑星探査機「はやぶさ」打上げ
2005 M-V-6、X線天文衛星「すざく」打上げ
2005 小型科学衛星「れいめい」打上げ
2006 M-V-8、赤外線天文衛星「あかり」打上げ
2006 M-V-7、太陽観測衛星「ひので」打上げ
2007 H-IIAロケットにて、月周回衛星「かぐや」打上げ
2010 H-IIAロケットにて、金星探査機「あかつき」打上げ
 2013  イプシロンにて「ひさき」SPRINT-A 打ち上げ

  







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